「新聞記者 夏目漱石」(牧村健一郎 平凡社新書 平凡社
明治のころの新聞事情を夏目漱石とその周辺のジャーナリストを通して描いている。今や夏目漱石は初めから大文豪として超然としたイメージがあるけれども、その地位は朝日新聞の専属としての時代に確立したものであって、どう転ぶかわからないまま、大学の安定した職を捨てて、文筆家として身を立てるを決意した漱石の朝日入社のいきさつが詳細に書かれているのが実に新鮮でした。後の講演なども新聞社の主催で仕事としてこなさなくてはならなかったもので、そこから後世に残る作品が出来ていったのだから、当時の朝日新聞の慧眼にも驚かされるし、後世の我々は運が良かった、と感じさせる良書。